Film

映画を観るのも、小さいころから大好きでした。
あの頃ほどではないにしろ、今も映画館で映画を見るのはとてもワクワクします。
やっぱり、いい映画は大画面のスクリーンで見たいですよね。
なお、ここに書かれた評価は、あくまでよっち個人の感想・評価ですので、ご了解よろしくお願いします。
(★は5つが満点です)

Updated: 10th October, 2005



2005年の映画

2004年の映画2003年の映画

newCharlie and the Chocolate Factory10月8日鑑賞
監督:Tim Burton主演:Johnny Depp★★★★★

ロアルド・ダールの古典的名作「チョコレート工場の秘密」をティム・バートン/ジョニー・デップという黄金コンビが映画化。よっちが子どもの頃に大好きだった原作の映画化なので、とても期待していたのですが、期待以上の面白さでした。かつて「バットマン」があまりにもひどい駄作だったため、一時ティム・バートン作品は敬遠していたのですが、傑作「スリーピィ・ホロウ」で見直してからは、バートン作品には好感を持っています。ちょっとゆがんだ童話チックな世界、というのがバートン監督が一番本領を発揮するような気がするので、そういう意味ではこの映画はまさにぴったり。原作にとても忠実に映画化したそうだけれど、もともとの原作が、"バートン的な"要素をふんだんに含んでいるので、映画と原作の"幸福な結婚"が実現できたのだと思います。

というわけで、カラフルでブラックユーモアたっぷりの、ダール&バートンワールドが炸裂! 子どもたちが、ある意味"血祭り"にあげられてゆくので、見ようによっては、とても無邪気なホラー映画とも言えるのかもしれません。それこそティム・バートンの本領ですね。意地悪でちょっとひねたものを隠し持っているかわいらしさ&無邪気さ、とでも言いますか……。

ジョニー・デップの演技も素晴らしい。「パイレーツ・オブ・カリビアン」とは全然違う、つるつる顔の無邪気でナイーブな変人ウォンカを好演しています。しかし、それ以上に怪演なのが、ウンパ・ルンパたち! あのチョコレート色の濃い顔の小人たちのしぐさや、強烈な"歌"には、圧倒されてしまいます。何百人と出てくるウンパ・ルンパが、すべて一人の俳優さんによって演じられている(要するにみんな顔が同じ)のがまたすごい。演じた俳優さんは、ある意味この映画で一番苦労した人なのではないでしょうか(笑)。

もうひとつ、注目すべきはダニー・エルフマンの音楽です。「スリーピィ・ホロウ」や「スパイダーマン」シリーズなどで、とてもドラマチックで正統的な音楽を聴かせてくれるので、この人の音楽はとても気に入っていました。この映画でも、オープニングからドラマチックでワクワクさせるようなテーマ曲を聴かせてくれます。(そういえば、この映画は、最近の映画には珍しく、オープニングテーマ曲がちゃんと流れて、メインキャストやスタッフを紹介しています。ひと昔前の映画には必ずあって、よっちはあれがけっこう好きだったのですが、最近の映画にはそれがないのが多いのでちょっと寂しく思っていました)さらに、意外な収穫というか思いがけなかったのは、ウンパ・ルンパの歌4曲が、それぞれにエスニック風、70年代ディスコ風、ラブソング風、ハード・ロック風(クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」そっくり!)とさまざまなヴァリエーションで演奏されることです。ダニー・エルフマンの幅広い方面での才能を見せられた、いや聴かされました。

名作映画の、オマージュをこめたパロディがちりばめられているのには、ニヤリとさせられます。とくに、「2001年宇宙の旅」をパロった"板チョコモノリス"には大笑いしていました。快(怪)作です!

La Marche de L'Empereur 皇帝ペンギン8月13日鑑賞
監督:Luc Jacquet主演:(emperor penguins)★★★★★

フランスのドキュメンタリー映画。皇帝ペンギンが愛らしい! そして雛ペンギンは卒倒するくらいかわいい(笑)! 可愛らしさ満点なので、歩き回るペンギンたちを見ているだけでももう最高なのですが、そこはフランス映画。決して、かわいいだけの子供だまし映画にしてはいません。過酷な南極の冬の中で、内陸までえんえんと行進して営巣地にたどり着き、つがいをなして厳しい冬を乗り切りながら子育てをしてゆくさまは、自然の厳しさ、生命の力強さをまざまざと感じさせてくれます。

実際、過酷な映像も容赦なく出てきます。卵を壊してしまう若いカップル、アザラシに捕まえられてしまう母ペンギン、ブリザードで凍えて力尽きる雛、かもめに襲われる雛……。これもまた、目をそむけてはいけない自然の一部なのです。口当たりの良い部分だけで済ませず、こういった側面も容赦なく(笑)見せるところが、実にフランスらしいと思います。

そしてまた、その映像美! ただでさえ氷と大自然の美に南極の映像だけでも素晴らしいのですが、さらにはっとさせられるカメラアングルが多用され、ただのドキュメンタリーではない映像美に満ちた映画になっています。とくに、ペンギンの求愛のダンスのシーンは、その美しさに息を呑むほどです。エミリー・シモンの音楽も素晴らしい。エレクトロニカを多用しながら、南極の氷の世界を表現しています。また彼女の、ビョークやエミリアナ・トリーニを連想させる歌声が印象的でした。

ただひとつだけ気になったのはナレーション。父ペンギン・母ペンギン・子ペンギンの声が(もちろん人間)出てくるのですが、おおっぴらに会話こそしないものの、ちょっと人間的な演出が過剰かなと思うシーンが多少あり、気になりました。もう少し客観的なナレーションに抑えておいたほうがドキュメンタリーらしくて良かったような気がします。それでも、こういうふうに演出してしまうところが、むしろ実に情熱的でフランス的だと言えるのかもしれません。突き放した立場で見るのではなく、あえて擬人化させて物語性を持たせることによって、親しみを持たせて観客を感情移入させようという意図なのでしょう。(ハリウッド映画ならありえないであろう)シーンの切り替わりのちょっとした不自然さなども、かえってフランスだなあと感じてしまったりします。

姑獲鳥の夏8月6日鑑賞
監督:実相寺昭雄主演:堤 真一★★★

大好きな京極夏彦氏の"妖怪シリーズ"の中でも、一番好きな作品の映画化とあって(多少キャスティングに不安を感じながらも)とても楽しみにしていた映画でした。以下は、原作既読者(&それを高く評価している)としての立場から書いていますので、相当バイアスがかかっていると思いますが、ご了承ください。原作と映画は別物、とはよく言いますが、これに関しては、よっちの原作への思い入れがとても強いので、比べてしまうのは仕方ないと思っています。

堤真一の京極堂や永瀬正敏の関口はまあいいとして、阿部寛の演じる榎木津礼二郎は、ちょっとイメージ違いすぎて受け付けませんでした。まず色素の薄い「希臘彫刻のような」超美形、にしてはひげの濃すぎる外見の違いもさることながら、(まだ「姑獲鳥の夏」ではやや人がましいところがあるとはいえ)榎木津はもっと人間離れしていなければなりません。いや、阿部寛はいい役者だと思うのですが、やっぱり人間の常識の範囲内、というふうにしか見えないのです。とどのつまり、現実の俳優には(どんなに優れた人でも)榎木津を演じるのは不可能、ということなのかもしれませんが。それほど、小説の中の榎木津は破天荒なキャラクターなのです。

宮迫博之演じる木場刑事も、違いすぎました。だいたい小柄で丸顔の宮迫が、原作ではとても大柄で四角くえらの張った顔をしている木場刑事を演じること自体、無理があります(宮迫もがんばって演技してはいましたが……)。

この2つのミスキャストだけでも、かなりげんなりしてしまいましたが、さらに(これは脚本と演出の問題だと思いますが)、原作に多分に含まれている映像で表しにくい部分を、映像で{魅せる」ことに失敗してしまっているなと思わせる部分が多かったのも残念でした。なんというか、シーンの組み立て方や演出方法が、原作を消化して昇華したうえで行なわれておらず、"旧来の"方法で演出されてしまっているため、原作の持っている独特な"空気"みたいなものが失われてしまったのです。もう少し違った見せ方があったように思うのですが……。

特に! ラストのカタストロフィの場面は、もっと怒濤のように畳みかけて展開しなければいけないのに、なんだかもったりとした演出になってしまい、原作がもつ「"静"から"動"への見事な切り替わり」が完全に失われてしまって台無しでした。いや、原作云々以前に、あそこはクライマックスなんだから、クライマックスらしくラッシュしていく感じで演出するのが基本でしょうが!? 余計な火事なんか(原作にはない)起こさずとも、原作どおり雨の中でちゃんと盛り上げられたはずですし、比較的素直に映像化できるシーンなだけに、余計残念です。

それでも、物語の舞台である昭和20年代の雰囲気はけっこう味わえましたし、まあ映像として動いている「姑獲鳥の夏」を見られたこと自体、それなりに良かったことでありましたが。それでも、シリーズの中では一番短いこの原作がこの端折られ方では、どんどん長くなっていく以後の作品ではどうなってしまうのだろうと心配です。次の「魍魎の匣」は、よっちの中ではとても評価の低い作品なので、正直、映画化されても観に行くかどうか微妙なところです。

STAR WARS Episode III / Revenge of the Sith7月31日鑑賞
監督:George Lucas主演:Ewan McGregor★★★★★

シリーズ新3部作("新"と言っても前史なのですが)の完結篇。加えて、1977年(日本公開は1978年)から続いてきたこのサーガの最終作、ということで、それだけで、最初に劇場で第1作(エピソード4)を観て以来このシリーズの虜になっていた私としては、大変に感慨深いものがあります。壮大な6部作がひとつにつながったと思うと……。

完結篇にふさわしく、映画の出来も「素晴らしい」の一言です。観る人はみな結末が分かっている上での、その「如何に」を、このように見ごたえのある悲劇として描き出してみせたルーカス監督に脱帽です。また随所のアクション、宇宙戦などのシーンの臨場感の素晴らしいこと。特に、ジェダイたちの戦いぶりには目を見張ります。その中でも、クライマックスのオビ=ワンとアナキンの"運命の戦い"や、可愛らしいヨーダの(失礼)戦いぶりは特筆ものでした。「エピソード1」を劇場で4回観た(DVDを加えるともっと多い)私としては、10回くらいは観るに値する内容でした。

しかし、現在(2005年8月11日)また1回しか観ていません。というのも、もう一度観る「心の準備」(?)が出来ていないからです。やっぱりアナキンがダークサイドへ堕ちてゆく物語であるので、物語の後半はかなりダークで悲しい内容が続きます。それが、アナキンも、他の登場人物(始終ゴキゲンなパルパティーンは除いて)も、何も初めから悪を目指したのではなく、むしろ「よかれ」と思い、よいと思う方向へ向かっていった結果の、誤解やすれ違いも重なった悲劇なのが余計につらい。それが観ていてやるせなく、悲しく、痛々しいのです。特に、各地でジェダイたちが斃れてゆくさまやラストの悲劇は、本当に画面を見ていられないほど悲しいものでした。(オビ=ワンの"You were the Chosen One!"というセリフには、本当に泣けました……)物語に深く感情移入してしまうよっちとしては、この映画も客観的な"観客"として見ていられる映画ではありませんでした。人々がバタバタと死んでゆくだけでもつらいのに……。

しかし、ここまでこのシリーズを観てきて、この壮大な銀河全体の物語に見えたものが実は、ひとつの家族とそれを取り巻く人々の物語だったんだと気づかされます。このエピソード3の後半の悲劇は、実に個人的な(舞台的とさえ言える)物語でした。宇宙全体の規模で始まった物語は、個人に収斂して、また宇宙全体に拡がってゆくのです。

そんなわけで、よっちはまだ、もう一度この映画を観て「物語を繰り返す」勇気がありません。「現実」と違い、何度も繰り返し体験することができるのが「物語」です。この映画にso much involvedしてしまったよっちとしては、映画の内容が「(仮想?)現実」から「物語」に還ってきて、もう一度観ることができるようになるのを待ちたいと思います(その頃まで上映していればいいが……笑)。

War of the Worlds 宇宙戦争7月23日鑑賞
監督:Steven Spielberg主演:Tom Cruise★★★★

この夏の2大話題作、そのうち一方の大作です。邦題が「宇宙戦争」ですが、これはSF映画でも戦争映画でもありません(もちろん、それらの要素は少しずつ入ってはいますが)。これは正しくは、スピルバーグ監督が劇場映画デビュー作「激突!」から得意としてきた、パニック映画、ホラー映画というべき作品です。よっちは、通常ならばカテゴリー分けを最も忌み嫌うのですが、この映画が邦題による間違った先入観を持たれるのは好ましくないと思い、あえてこう書きました。

そうです。スピルバーグ監督が「激突!」以来、「ジョーズ」や「ジュラシック・パーク」などで発揮してきた、パニック映画の真骨頂がこの映画でも発揮されているのです。攻め寄せる異星人の乗り物"トライポッド"の恐ろしいこと! 特に、海の中から悪夢のように出現する姿は印象的です。かつて「未知との遭遇」が公開されたとき、人々は「ジョーズ」のスピルバーグ監督が作ったのだから、恐ろしい宇宙人が地球に攻め寄せる映画を想像していたのですが、実際は人類と異星人との心温まる交流の映画でした。しかし、今回の「宇宙戦争」こそは、まさにあの時人々が想像した映画の姿そのものだったのではないでしょうか。それにしても、なぜ「今」このような映画を作ったのか。無差別に人々を殺してゆく宇宙人の姿は、よく言われるようにテロリズムへの恐怖と重ねられているのでしょうか。スピルバーグ監督にとって、ある意味"作らねばならぬ映画"だったのかもしれません。

この映画で一番中心に描かれるのは、悪夢のような侵略者そのものではなく、宇宙人の侵略に遭い、パニックに陥って逃げ惑う哀れな人間の姿です。生き延びるために、あらゆるエゴをむき出しにするさまは、目を背けたくなるほどリアルです。善悪の基準はもはや崩壊しています。善意から主人公の娘を連れ去ろうとする老婦人の姿が象徴するように、"善"ですら"悪"として捉えられさえします。主人公レイですら例外ではありません。トム・クルーズ演じる主人公は、他の彼の主演作のように、なんら特殊な地位にもついておらず、特殊な能力も持っていません。ただただ平凡な一庶民として描かれており、自分と子どもを守るためにエゴをむき出してゆきます。人を殺しさえします(ある意味、このシーンがクライマックスともいえるでしょう)。

そんなわけで、非常によく出来た映画なのですが、とにかく全編を支配する重苦しさと閉塞感、そしてラストのカタルシスの無さゆえに、観終わったあとはとても後味の悪い映画でした。このようなパニック映画を"娯楽"として楽しめる人は多いのでしょうが、私は物語の中に強く感情移入してしまうたちなので、あまりに出口のない閉塞感のために、とても客観的に楽しんで観ることはできませんでした。娯楽として観る以上、映画にはもう少しカタルシスを求めたい、と私は思います。

Kingdom of Heaven5月21日鑑賞
監督:Ridley Scott主演:Orlando Bloom★★★★★

5月にしてようやく、今年初めて劇場で映画を観ました。それほどに今年の前半は、見たい気を起こさせる映画がなかったというわけですが、これは、中世ヨーロッパ好きのよっちにはたまらない、十字軍という題材である上に、あのリドリー・スコットが制作・監督した映画とあっては見逃すわけにはいきません。

期待以上の良作、とてもいい映画でした。スペクタクルではありますが、観終わると何も残らないような単純な娯楽映画ではありません。むしろとても考えさせられる映画とさえ言えるでしょう。9-11のテロ以来、アメリカのイラク進行へと続くこの時代の中で、キリスト教徒とイスラム教徒と単純な善悪で二分することをせず、非常に公平な視点から描いたリドリー・スコットの英断。そしてこの映画に登場する英明な指導者と愚かな君主たち、その中で高潔を貫こうと苦悩し揺れ動く、オーランド・ブルーム演ずる主人公バリアン。何が正義なのか、何が悪なのか。信仰とは、本当の"神の国"とは……。観終わったあとに、深く考えてしまいます。

相変らずリドリー・スコットの映像美学と、容赦ないほどのリアリティぶりは健在です。冒頭、ヨーロッパの映像が暗く、重苦しい色調で始まるのが、イェルサレムに近づくにつれて、画面にだんだんと色彩が溢れていく、その展開の素晴らしさ。エキゾチックで細部まで充実した中世イェルサレムの街並み。蜃気楼の彼方から姿を現す大軍、激しい戦闘場面。初の単独主演・オーランド・ブルームも、今まで見た中で最も力の入ったいい演技をしていますし、脇を固めるベテラン俳優たちも素晴らしい。その中で特に、ボードワン4世を演じたエドワード・ノートンと、サラディンを演じたハッサン・マスードは特筆に値します。

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